余計な授業をする講師
私は今まで3つの英会話教室で講師をしてきました。いわゆる「大手」と言われる会社ばかりです。ところが講師の管理や指導はほとんどなく、いわば放ったらかし状態になっていたため、中にはとんでもないことをやっている講師がいました。
講師と言っても大学生のアルバイトなどではなく「大人」ですから、常識的に考えておかしいことかどうかわからないかと思うようなことをする人もいて、当時は結構な確率でびっくりするような出来事に遭遇していました。
ABC English Schoolの現在のシステムはこういったことを参考にしてできていることを知っていただくために、その一端をご紹介します。
一般的に、大手の英会話学校では一年で所定のテキストを終えるようにカリキュラムが組まれています。これは、レッスン内容が教室や講師によって違いがないよう、均一化するためです。生徒は毎年、新しいテキストを購入することになっていて、1月か2月の月謝と一緒に教材費が口座から引き落とされます。
ある年の4月、前任者から私がクラスを引き継いだ時に生徒の保護者から
「新しいテキストに進む前に、前のテキストを終わって下さい。」という手紙を渡されました。意味が分からず、そのクラスの生徒全員に確認したら、昨年のテキストは半分ほどしか進んでいませんでした。
ではレッスン中に何をしていたのか尋ねたら、英検の勉強をしていたと言うのです。
そのクラスは小4と小5が五人のクラスで、英会話クラスです。なぜ英検の勉強などしていたのかと思いながら本部に苦情が出ていることを報告し、前任者に連絡しました。
前任の講師はすでに退職していましたが、保護者への説明と対応のために事実確認をしなければなりません。前任の講師は、
「小5ぐらいになったら英検の勉強もした方が良いと思った。」
「保護者と相談するようにと生徒には申し伝えた。聞いていないのは生徒がきちんと伝えていないか、保護者が聞いたことを忘れている。」
「他にも英検の勉強をさせている講師はいる。」
などと言いました。
あまりにも幼稚な言い訳に、私はただただびっくりしました。
英会話クラスでは英会話レッスンをするべきであって、生徒は英検の勉強をしに来ているのではありません。それなのに勝手にレッスン内容を変えておいて、生徒や保護者の責任にするのかと思い、腹が立ちました。
それで私は、
「英検の勉強をしたら英会話レッスンはできないと保護者にご自身で伝えたんですか?それで保護者は納得されましたか?」
と言うと
「小5ですよ!そんなことぐらい、子供でも親に伝えられるでしょ?
それに英検の勉強をしたら英会話レッスンができないのは当たり前でしょ!」
と言われました。
「そんな「当たり前」が通用するか!」と怒り心頭の私は本部に連絡し、この講師にやり残したテキストのレッスンをさせてくれと言いました。
本部の教室担当者は対処に困り結局、私がやり残したテキストと次のテキストの両方を一年間でやることになりました。
急いでテキストを消化するだけのレッスンをするなど、良いレッスンとは言えません。
前のテキストが終わっていないのであれば次のテキストを買わせないなど、他に対処法もあったはずですが、大手であればあるほど、こういった融通が利きません。
英会話レッスンは週にたった1時間しかないのに、それを英検の勉強に充ててしまうと、会話力は絶対に落ちます。実際、私が引き継いだクラスは、経験年数の割に会話力はありませんでした。
この一件から、ABC English Schoolでは英会話と英検はクラスを分け、レッスンの目的を混同させないようにしています。